自転車旅

【2024GW青森ツーリング】1日目 新青森駅~谷地温泉

2024年4月27日
早朝、まだ空が明るく成りきらないなか、人のまばらな電車に乗り込む。
片づけきれなかった仕事はたくさんあるが、それは休み明けの自分に申し送りしてきた。
悪態をつく未来の自分が見えた気がするが、それは今考えるべきことではない。

待ちに待った9泊10日の自転車旅、開幕。

今回の行先は故郷”青森県”。
生まれてから大学進学を機に実家を離れるまでの18年間住んでいたが、実のところ県内の観光地はあまり行ったことはない。
当時は卓球と読書にゲーム、時々勉学に励む量産型インドア派で、休みの度に出かける今のスタイルとは真逆の生活を送っていた。
家族旅行も程々にしたが、県外に行くことの方が多く、有名どころの名前は知ってるけどよく知らない、そんな感じだった。

けれども、一度旅行趣味に嵌ると、自然豊かで景色と食材に恵まれた実に魅力的な土地に映る。
帰省ついでに何度か走ったことは勿論あるが、たった数日で回るにはあまりに広く、まだまだ行ってみたい場所だらけ。
そんなわけで、今回の旅は長期連休を使って、県内の有名どころをぐるっと回ろうと思う。

閑話休題。
おっさんの自分語りなんてどこにも需要は無いのだ。

輪行:東京~新青森<グランクラス>

東京駅から新幹線に乗り込み新青森駅を目指す。
行くぜ、青森。

今回はGWということもあり、車両最後尾座席裏の輪行スペースが取り合いになる気がしたので、奮発してグランクラスのチケットを取った。
グランクラスの一人席側の最後尾であれば、誰に迷惑かけることもなく確実におけるので随分と気が楽になる。

それに、東京-新青森間であればドリンク・軽食付きとなるので、ちょっとお得な感じがする。
滋味深い味付けの春の品々に、旅の期待が高まってくる。日本酒が欲しい
珈琲とお茶菓子を片手に、窓の外を眺めながらぼーっとしていると、あっという間に新青森駅に到着してしまった。

ただいま、青森。

今回の相棒は柳サイクル謹製QUIET。
やはり旅車にはパニアバックとフルフェンダーが似合う。
オーダー時に前積載前提に作ってもらっているので、積んでもハンドルが取られたり重くなったりしない。
むしろ、この状態が一番しっくりくる。

青森市街:ラーメンあさ利

走り出す前にまずは腹拵え。
新青森駅から西へしばらく走り、高校生の頃よく通ったラーメン屋”あさ利”へ。

青森のラーメンと言えば、煮干し系や誰も知らないB級グルメの味噌カレー牛乳ラーメンの名前が上がるだろうが、私はここのラーメンを推したい。
開店後間もない時間に到着したが、すでに数人並んでいて、相変わらず繁盛していることに一安心した。

頼んだのはネギラーメンの4番。
真っ赤な油の層が表面を覆っており、持ち上げた麺にもしっかりと絡みついている。
見た目の通り激辛であり、食べ進めていくと唇が痛みだし、気化したカプサイシンが気管を焼き、胃の中にマグマが滞留しているかのような錯覚を覚える。
だが、辛さだけではなく確かな旨味があり、ゴロゴロとした角切りチャーシューと甘みのあるネギも合わさって、中毒性のある美味しさを醸し出している。

ちなみに、4番と言うのは辛さのランクで、今回食べたのはご段階中の上から4番目。つまり、上にまだ3段階強い奴らが残っている。1番を注文すると店内が一瞬ざわつくので辛い物に自信がある人は是非試してほしい。なお、食べた翌日はトイレで苦しむこと請け合いなので注意されたし。

国道103号線:萱野高原〜県道40号線:谷地温泉

胃の中で熱い塊が蠢いているのを感じながら、今日の宿に向かってそろりそろりと標高を上げていく。
国道103号線を1時間ほど登って萱野高原へ到着。
薄曇りの空と、まだ芽吹く前の枯れ草色の草原の向こうに八甲田の山々が見える。
小さい頃はこの時期はまだ下の方まで白かった記憶があるが、この頃は温暖化の影響か山肌がだいぶ露出している。

茶屋でおでんをつまみながら一休み。この生姜の効いた味噌だれのかかったおでんも故郷の味。
長生きのお茶も好きだったのだが、流行り病によりなくなっていた。

宿へ向けて再出発。陽に暖められた空気と、残雪に冷やされた空気の境目を感じながら走る。
ああ、春だ。

途中で舵を東へ切り、県道40号線を走って、雪中行軍遭難記念像へ。
“岨嶮を跋っし、もって戦術を講じ、寒暑を冒し、もって筋骨を練るにあり。この如く成らざれば、戦時の用に供するに足らず。”
旅を嗜む者として、この心構えは胸に刻んでおきたい。入念な計画と日々の鍛錬こそが旅の困難を跳ね除けるのだ。

歩兵第5連隊第2大隊 後藤房之助伍長

祖霊の像を後にし、八甲田山の周りをぐるっと回るように谷地温泉へ向かう。
道中、雪解け水で道が川になっており、自転車の横を車が白い水飛沫を上げながら通っていく、冷たい。

午後4時、新青森駅から走る事約50km、ようやく目的の谷地温泉へ到着した。
たった50kmにしては随分と疲れた気がするので、早く温泉で疲れを溶かしたい。

日本三秘湯・谷地温泉

この旅の目当ての一つ、八甲田の山中にひっそりと建つ、日本三秘湯・谷地温泉。
Twitter(現X)でフォローさせてもらっている温泉有識者がこぞって良いぞと語っていた宿。
旅程を練るにあたって真っ先に確保して、とても楽しみにしていた。

館内や部屋は華美ではないけれど、綺麗に手入れをされた落ち着いた作り。
手早く荷物を整理して、待望の温泉へ向かう。

硫黄の湯花が浮き、白濁色が特徴のやや熱めの”上の湯”と、足元から湧き出るのが特徴の温めの”下の湯”、ゆっくりと時間をかけて二つの浴槽を交互に堪能する。
特に、ぬるめの下の湯にじっと浸かっていると、身体とお湯の境目が曖昧になっていき、本当に温泉に溶けていくようだった。
夕食の時間さえなければ、本当にいつまでも浸かっていられそうな快適さ。

日帰りでも入ることができるので、青森を訪れる際には是非立ち寄りを一考していただきたい。

温泉の後は、夕食の時間。
夕食のプランはいくつかあるが、今回は名物の岩魚料理を堪能すべく、岩魚御膳プランを選んだ。
岩魚のお造りに、塩焼き、天婦羅、フライと岩魚4匹を贅沢に使い、さらに岩魚の骨酒までつき、まさに岩魚のフルコース。
岩魚は敷地内の生け簀からとれたばかりで新鮮そのもの。特にお造りのコリコリとした歯ごたえが子気味良い。
八甲田の清流で育ったおかげか、臭みも全くなく、ご飯とお酒がモリモリ進む。

食後はもう一度温泉へ。陽が落ちて薄暗くなった浴場もまた実に趣深い。
夕食がお腹の中で落ち着いたころにお湯から上がり、もう少しだけ晩酌をして床に就いた。
まだ50kmしか走っていないが、もうここで終わりでいいんじゃないかと思う程満足度の高い一日だった。

走行記録

走ったルート
・ルート:新青森駅~茅野高原~谷地温泉
・走行距離:48.5km ・獲得標高:1040m

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