【中山平温泉~瀬見温泉】山形県最古の旅館・喜至楼へ
冬といえば雪、冬といえば温泉
そうだ、東北へ行こう!
今回目的地に選んだのは、山形県に現存する最古の温泉旅館である「瀬見温泉・喜至楼」。
Twitter(現:X)でフォローしている旅好きの方々が、口々にオススメしているのを見て、いつか訪れてみたいと思っていた。
ついでに自転車も持って行って、スノーライド納めもしてしまおうという算段。
目次
Day1:鳴子温泉郷・中山平温泉~瀬見温泉・喜至楼
朝の5時、自転車乗りの朝は早い。
自宅から少し離れた木更津駅から出発する。
最寄り駅より一時間ほど早い始発に乗れるので、温泉を長く堪能できる。
移動は8,800円でエリア内が2日間乗り放題になるJR東日本の週末パスを使う。
出発地の中山平温泉や、目的地の瀬見温泉はフリーエリアの範囲ギリギリ、陸羽東線沿いにあるので使わない手はない。
乗車券代だけで片道8,360円なのでほぼ半額、特急券を足しても約3割引きでお得。
中山平温泉・しんとろの湯
午前10時17分、鳴子温泉郷の中心、鳴子温泉駅の一つ先、中山平温泉駅に到着。
素朴な駅舎がポツンとあるだけ。
観光客の多い鳴子温泉とは違って静かな雰囲気。
新庄方面へ向かう気動車を見送って輪行解除。
今回は大型サドルバックではなく、フォーク積載スタイル。
サドルバッグに車体を振られないので安定感があって、最近のお気に入り。
駅から数分で第一の目的地、「中山平温泉 しんとろの湯」に到着。
が、お腹が空いていたので、まずは腹ごしらえ。
お隣の「ゆの駅 しんとろ」の食堂へ。
開店10分前だったので看板のメニューを眺めながら待っていたら、ありがたいことに、「準備できてるからどうぞ~」と案内された。
ここでは冬らしく鍋焼きうどんを頂いた。
分厚い仙台麩がつゆを吸っていてとても美味しい。
お腹を満たして今度こそ温泉へ。
10人ぐらいが限度の内湯がひとつだけの温泉だが、お客さんの数はそこそこ多い。
お湯は源泉かけ流しでpH9.3の弱アルカリ性で、美肌成分のメタケイ酸が490ppmも入っているらしい。
メタケイ酸がお肌に効くかどうかはさておき、名前の通りとろっとしたお湯で、浸かっていると肌がぬるぬるになり、潤ってくる実感がある。
美肌の湯と呼ばれ、お客が絶えないのも納得の温泉でした。
国道47号線・出羽仙台街道中山越
身体が温泉で温まったところで瀬見温泉に向けて出発。
国道47号線を西へ走る。
峠に近づけば少しは雪もあるかと思ったが、真っ黒な地面のまま県境まで来てしまった。
午後1時半、アスファルトをスパイクタイヤで切りつけながら中山峠を下り、あっという間に瀬見温泉の近くへ。
チェックイン開始の時間までまだ時間があるので、手前の「道の駅もがみ」と「川の駅ヤナ茶屋もがみ」をぶらぶらする。
昨年来た時には道の駅はなかったが、2023年11月26日にOPENしたらしい。
隣に食堂や土産屋、コンビニがあるので、道の駅の館内は控えめ。
瀬見温泉・喜至楼
午後2時、「瀬見温泉・喜至楼」へ到着。
明治元年、西暦に直すと1868年、150年以上も昔に建てられた喜至楼本館。
何度も写真で見かけていたが、実際に目にすると想像以上の重厚感に押しつぶされそうになる。
受付のある別館入り口から館内に入る。
こちらは大正と昭和時代に建てられたらしい。
比較的新しい見た目なので外観は昭和時代のものだろうか。
フロントで宿帳を記入する。
自転車で来ましたと伝えて驚かれるのにもそろそろ慣れてきた。
玄関内に置かせてくれるとのことで、お言葉に甘えさせていただくことに。
今回泊まるのは、一番歴史のある本館の客室。
しかも幸運なことに、宿の方曰く一番人気の101号室だった。
確かに角部屋で明るく、美しい飾りの入った障子にガラス窓と意匠の凝らされた部屋で、一番人気という言葉も納得だった。
館内にはエアコンなどという無粋なものはなく、暖房は石油ストーブと石油ファンヒーターのみ。
冷え切った部屋を化石燃料で温める瞬間からしか得られない栄養素が存在する。
石油ファンヒーターの前でゴロゴロするのは、炬燵に埋まるのとまた違った風情があって実に素晴らしい。
夕食まで時間があるので、まずは温泉にと思ったが、メインの大浴場・ローマ風呂が女性専用時間帯だったため、先に館内を散策する。
煌々と輝く石油ストーブの明かり、大昔からの宿の歴史を伝える資料の数々、迷路のように入り組んだ廊下、カメラ片手に歩くだけで味と趣でお腹いっぱいになりそうだった。
自炊もできるようなので、食料を買い込んできて素泊まり湯治なんかも素敵かもしれない。
一通り歩き回って満足したので、宿の向かいの「瀬見温泉 せみの湯」へ。
外には温泉卵の作れる足湯、入口を開けると受付は無く、400円入れると脱衣所への扉が開くシステムだった。
初めて見るシステムだが、無人でも確実に回収できそうな理にかなった仕組みだと思う。
なお、お釣りはでないし、両替機もないので100円玉はしっかり用意していこう(1敗)。
温泉は温度の違う内湯が2種類と露天風呂の3槽構成。
内湯の片方はぬるい湯と書いてあるが、42~3℃あって全然ぬるくなく、熱い湯の方が44~45℃の高温泉。
ぬるい湯と熱い湯、時々露天風呂と外気浴を挟むことで無限に優勝できる。
さらに今回は使わなかったが、床から出る上記を浴びるふかし湯もあって、かなり充実度の高い施設だった。
午後5時過ぎ、瀬見の湯を満喫している間に日も沈み、窓から漏れる橙色の明かりが喜至楼の美しさを際立たせていた。
午後6時、夕食の時間。
今回は少し豪華な山形郷土料理プランを選んだ。
松川鮎に馬刺し、モクズガニの味噌鍋、板蕎麦などなど、山形らしい料理が並ぶ。
馬刺しのイメージはあまりなかったが、聞いてみると長井市の方では昔から馬食文化があるらしい。
(参考:長井商工会議所 長井馬肉大全)
特に鮎が大振りでかつ薫り高く非常に美味しかった、次も鮎の付くプランにしよう。
午後7時、食事を終えると、ちょうど大浴場のローマ千人風呂が男性用の時間になるので早速向かう。
大きな円形のタイル張りの浴槽。
緑色のタイルが所々剥がれてしまっているが、綺麗だった時分は大層荘厳な浴槽だったに違いない。
今のこの状態はこれで味があって嫌いじゃない。
お湯は癖がない温湯でいつまでも浸かっていられる。
午後8時、部屋に戻って一人二次会。
瀬見温泉内にある「大黒屋商店」さんで買ってきたお酒を開ける。
純米大吟醸 楯野川 美しき渓流、やや辛口で非常にすっきりとした味で香りも穏やか。
これはお酒単体というよりも、魚や鶏肉なんかの淡白な和食と合わせると輝きそうだった。
好みとしてはもう少し香りが立っている方が好きだが、これも美味しいお酒。
写真を整理したり、じゃん魂で勝ったり負けたりしながらお酒を半分ほど開け、午後11時就寝。
Day2:瀬見温泉~鍋越峠~古川駅
瀬見温泉・喜至楼<朝>
午前七時、ちょうど朝食の時間に起床した。
夜の間に冷えた部屋を暖めるべく、石油ファンヒーターのスイッチを入れてから食堂へ向かう。
朝食は比較的シンプルだが、ご飯の進む小鉢が多く、朝からお代わりしてしまった。
食堂では自動車免許の合宿で泊っている方々もご一緒。
こんなところに泊まって獲る免許、いいなあ。
自分もここで免許取りたかった。
今日の行程にも、チェックアウトの時間にもまだ時間があるので、昨日はいらなかった別館の浴場に向かう。
こちらはオランダ風呂、本館のローマ風呂と比べると小さめだが、こちらの方がやや湯温が高く好みだった。
午前10時、チェックアウト時刻ぎりぎりまで旅館の風情と温泉を堪能し出発。
月並みだが、落ち着いた時間を過ごすことのできる、とても素晴らしい旅館だった。
また来ます。
山刀伐峠〜鍋越峠
今日は、昨日走ってきた国道47号線をいったん東へ戻り、赤倉温泉の辺りから県道28号線・山刀伐峠(なたぎりとうげ)を越える。
そのあとは国道347号線・鍋越峠を越えて宮城県側へ降りる予定だ。
全く雪のない路面、スパイクタイヤがアスファルトを掻く音を虚しく響かせながら走る。
去年は分厚い雪の壁の間を抜けて走った山刀伐峠も、真っ黒な路面を晒していた。
山形側から鍋越峠を登っていく。
仙台に住んでいたころは、よく銀山温泉に行くために通っていた。
銀山温泉で汗を流して、この峠を登り返してまた汗をかいていたのもいい思い出。
峠のほんの少し手前、長寿の名水が雪の中でも湧いていた。
当然ながら冷たくて登りで火照った身体を冷やすのに最適。
鍋越峠到着。
さらば山形県、また来ます。
鍋越トンネルを潜り、宮城側を下っていく。
鍋越峠は宮城側の方が、渓流沿いを下っていく形になるので快走路度合いが高い。
下っていく途中、壁から湧き出た水が落石防止用のフェンスに氷のカーテンを作っていた。
これも冬ならではの光景。
峠を下りきって347号線をそのまま東へ。
大崎市街・古川駅周辺
午後2時40分、美味しそうなラーメン屋を見つけたので遅めのお昼ごはん。
「らーめん田舎や」で特性味噌らーめんを注文した。
仙台味噌の高砂長寿味噌を使用しているらしい。
味噌のまろやかなスープに、分厚いチャーシューも美味しかったが、やたらともやしが美味しかった印象。
午後15時30分、古川駅に到着し二日間の行程終了。
さっさと新幹線に乗って帰っても良いが、せっかくなので一杯飲んで帰りたいところ。
駅の駐輪場に自転車を置き、駅前をふらふらする。
少し歩いたところで、やや早い時間だが営業しているお店を見つけた。
「大衆酒場 げんてん」、毎日午後3時から営業とのこと、素晴らしい…
カウンターに座ってまずはビールで乾杯。
白子ポン酢にスダチのカルパッチョ(カンパチ)、自家製化にクリームコロッケに塩もつ煮、どれも美味しい料理に、大好きな宮城県のお酒、伯楽星を合わせていただく。
他にも魅力的なメニューが多々あったので、新幹線の時間をずらして、お酒と料理を追加しようかどうか真剣に迷った。
きっとまた来る機会があると思うので、楽しみを残しておいて駅へ戻る。
古川駅から東京駅行きのはやぶさに乗り込み、今回の旅と今年のスノーライドは終わり。
来年は雪が沢山降ることを祈る。
走行記録
・ルート:釧路空港~釧路駅~輪行~摩周駅~ホテル摩周
・走行距離:113.5km ・獲得標高:919m